眩しい太陽の光の中を、銀色の車が悠々と走り抜ける。

二人の各々の想いを乗せて、突き進む。


頬を紅く染めた紗季は、顔を隣に向けて

ハンドルを握る一博の腕に見とれていた・・・。


そんなに筋肉質ではないが、ハンドルを切る時に

腕に浮き上がる筋肉が、とってもたくましく力強く魅力的に見えた・・・。


車窓から見える、たくさんの良い景色には目もくれず

彼の腕だけを集中して見ていた・・・。


さっきの抱擁とキスで二人の間は確実に近づいた・・・。

だが、まだ、幾つもの壁がある様に思えていた・・・。


けれども、そんな事は気にせずに

紗季は一博を見つめ続ける

と言うよりも、自然に目が彼に向いてしまうのだった・・・。


「なぜ・・・この人は・・・さっき・・・キス以上を・・・

してこなかったの・・・だろうか・・・」

今迄の援交や彼女の人生経験上の男とは

明らかに、違った行動を一博はとっていた・・・。

それが、どうしても気になって仕方がなかった・・・。


「私の事を・・・どう・・・思って・・・いるんだろう?・・・」

紗季の乙女の心が、様々な憶測をめぐらせて

心配で苦しくなっていた・・・。

一博は、今の紗季の突然の行為にちょっと驚きながらも

ちょっとは、いや、結構身近に感じられる様になっていた。


久しぶりの女性の唇の感触が、自分の唇にしっかりと残っている。

肌の温もりが胸の感触が、自分の胸の中にしっかりと残っている。


ただでさえ、思わず自分もお金を出して

全てを見たり、触ったり、気持ち良くなりたいと思ってしまう程の

美貌と妖艶さを兼ね備えているのだ。


お金を出してまでもって言う、男達の気持ちも分からなくはなかった。

この、左肩から左腕全体に、今でも感じ伝わってくる

紗季の女性としての、感触、魅力、温もり。


今、一博の左腕に、しっかりと紗季の胸が押し付けられて

大きさや温もりや弾力が、手に取るように伝わってき続けていた。


紗季の女に、一博の中の男が完全に目覚め

もうクラクラしはじめて、ノックアウト寸前になっていた。

紗季の存在が、だんだん特別なものになりはじめていた。


一博は、ゆっくりと紗季の顔に視線を向けた。

おでこを一博の左肩に乗せて、耳を頬を紅く染めた

幸せそうな笑顔が、光り輝きながら一博の目に飛び込んできた。


さっきまで重なっていた、可愛くてちょっと厚めの唇も

ピンク色の口紅が良く似合って、しっかりと女の魅力を放っていた。


彼女の事をもっと良く知りたい!

もっと話したい!

もっと触れたい!


一博の男の心がそう叫びはじめていた。


「紗季ちゃん?」

「・・・なに?・・・」

「これからどうする?」

「私は・・・時間があるから・・・一博さんに・・・お任せします・・・」

「じゃあ、とりあえず、別の場所に行こうか?」

「うん・・・」


一博は、紗季に合わせながら立ち上がり

幸せそうに腕を絡み合わせたまま

ゆっくりと歩いて、駐車場に向かった。


行き交う人々の中に紛れ、広いショッピングモールを行く。

まぶしい光が、二人の行く道を、明るく照らし出す。

いつも、紗季は、援交の時には、実に積極的に振舞っていた・・・。

それは、男が好きな、男が求める女を演じ妖艶になっていた・・・。

少しでも貰える金額が増える様に・・・。

また、声をかけてもらえる様に・・・。

彼女なりに、数をこなし、実体験を重ねてきた経験から

自然に身についてきた事であった・・・。


でも・・・今は・・・「お金を」とか「声を」とかを全く気にせず

ただただ、心がかき乱されるくらい、一博の事を渇望していた・・・。

狂おしいくらいに・・・体の芯がうずき・・・頭がクラクラする・・・。

呼吸が乱れ・・・息苦しくなる・・・口の中が乾きカラカラになる・・・。


「一博さん・・・私・・・」

「どうしたの?」

一博は、紗季を大きく包むような目線と心で抱擁する。

「やっぱり・・・」

「うん?」


紗季は、一博と出会ってまだ半日位しかたっていないのに

こんなに自分が、自分の中が、損得抜きで

ハリケーンに襲われた様に、かき乱されているのが

とっても不自然で・・・、人事のようで・・・、不思議な感じだった・・・。


援交で、あんなにたくさんの男達と、毎日のように出会い

身体を重ねあって来た時には、何にも感じなかったのに・・・。

何故、一博だけが?・・・。

その事が全く理解出来なかった・・・。


今までも、頭で考える事よりも

思った事を直ぐに行動に移す人生を生きてきた・・・。

身体や感覚の方は、物凄く敏感に鍛えられていた・・・。

職業柄と言って良いのか・・・

彼女の生き方からと言った方が良いのか・・・


だからこそなのか、身体と頭がバラバラの状態なのかもしれない・・・。

中野紗季・・・18歳の初恋?・・・


彼女は、そんな身体を想いを押さえて、黙って一博から離れた・・・。

右手だけが一博の左手に重ねられていた・・・。

紗季は、好きとは言ったがその事自体が

本当なのか自分の気持ちが分からないでいた・・・。


今、一博に抱いている思いが本当に恋心なのか

彼女の心の中には、恋とか愛とかの文字が無かった・・・。


紗季は、生きる為に身体を張って生きて来た。

文字や言葉よりも、思いや行為なのである。


彼女が首を振ったのは、この事に対してであった・・・。

思わず口からこぼれ出た言葉を打ち消したかったのだ・・・。


「紗季ちゃん大丈夫?」

一博が、紗季の一連の変な行動を気にして問いかける。

「だ・・・だいじょうぶ・・・」

「そっか、なら良いんだけど」

「ねえ・・・一博さん・・・」

「何?」

「ううん・・・なんでもない・・・」

「なんだよ、よんでおいて」

一博がじっと紗季の瞳を見つめる。

なぜだかその視線を感じて、顔を背けてしまう紗季・・・。


けれども、一博の肩に回された紗季の手には

まだまだ、しっかりと力が入っていた・・・。


自分で自分が、自分の心が分からなくなっていた・・・。

今迄は、こうして自分からもキスをして男を喜ばせて

よりたくさんのお小遣いをもらっていた・・・。


けれども、一博とは、そう言う関係ではない・・・。

こんな行動をしても見返りなんてない・・・。

そんな、見返りなど求めずに、紗季はキスをしていた・・・。


身体が自然に動いていた・・・。

日頃の習性だからではない、今日の行為は・・・。


それは、だんだん早くなる心臓の鼓動と

紗季の頬と耳の紅く染まるさまが物語っていた・・・。

「どうしたの?」

「紗季ちゃんこそ、急にどうしたの?」

「え?・・・あ・・・あの・・・一博さんの唇が

一博さんの全てが欲しいって思っちゃって・・・」

「私の全てを?」

「うん・・・何だか良く分からないんだけど・・・

彼方と一緒にいたら、そんな気持ちになってきて・・・」

「そうだったんだ、ありがとう」

「あ・・・いや・・・」

そう言われると、紗季は顔を真っ赤にして伏せた。


「なんか、嬉しい様な悲しい様な

なんかびっくりしたって感じでさ」

「なんで?・・・」

「紗季ちゃんみたいな女性が

あんなに大胆なことをするんだなって思ってね」

「あ・・・なんか・・・私も気が付いたらって感じで・・・」

「そっか、まだ、私の事をそんなに知らないのに

良いのかな?って思ったりなんかしてさ」

「私は、一博さんの事が・・・あの・・・その・・・」

「何?」

「だから・・・ね・・・ほら・・・」

「ほらって言われてもね、キスは好きな人とした方が良いよ」

「もう!・・・だから・・・あなたが・・・好き・・・」

「え?今なんて?」

「いや・・・もう言えない・・・」

紗季は更に顔を紅くして、首を振る。

紗季の激しいキスに一博は、逆に段々不安になって来た。

彼女は一体何を求めているのだろう?

そんな疑問符が、頭の中を駆け回る。


正直、こんなに激しい口づけは経験がなかったし

紗季の様な可愛くて綺麗で純情そうな女性が

こんなにも激しいキスをしてくるとは、想像もしていなかった。


こんなに魅力的な彼女とキスが出来て嬉しい反面

ちょっと悲しい思いに襲われていた。


まだ、彼女を完全に好きになっていないのに

キスなんかしてしまって良いのだろうか?


紗季は一体自分の事をどう思っているのだろう?

好きになってくれたのかな?


一博は、紗季と唇を合わせながら

そんな事を考えていた。


一博は、紗季の両肩に両手を当てて

ゆっくりと身体を引き離す。


「あ・・・」

行き場を無くした紗季の唇から吐息が漏れる


「どうしたの?・・・」

紗季が一博を悩ましく光悦に浸る

しっとりと艶やかな瞳で見つめる

一博の肩の広さが、回した腕から感じ取れる・・・。

肩の広さよりも、彼自身がもっと広く大きな存在に思えた・・・。


キスをしながら、鼻から息がこぼれ始めた・・・。

紗季が顔を左右に適度に動かしながら

一博の唇の隙間に、舌を入れた・・・。


一博は、突然の紗季からの舌の進入に戸惑いながらも

黙って紗季の望むがままに応じた。


互いの舌が絡み合う・・・。

歯が、歯茎がなめられ合う・・・。

紗季みたいなこんな可愛い女性とディープキスができるなんて

と感動感激しながら・・・。


今の二人は、完全に二人の世界に浸っていた・・・。

行き交う人々の目線など全く気にならなくなっていた・・・。


昼の太陽の日差しが二人をまぶしく照らす・・・。

モールの天井のガラス窓から、二人を祝福するかの様に・・・。


紗季は、一博が一博のことが心の底から

全て欲しくて堪らなくなっていた・・・。

舌、唇、身体、視線、彼自身、彼の愛情が・・・。


舌をからめるごとに、唇を合わせるごとに

紗季だけをいつまでも、永遠に愛して欲しくなっていた・・・。


だんだんその想いが込められたキスになり

唇を求めるのが、舌を求めるのが

物凄く激しいキスになって行く・・・。

一博は、心臓が飛び出すくらいビックリした。

紗季が自分から唇を重ねて来るとは、思ってもいなかった。


紗季の唇の柔らかさにメロメロになり

ちょっぴりしょっぱくてちょっぴり甘い味がする。

瞳を閉じた紗季の顔を物凄い至近距離で見つめていた。


紗季が思いっきり首に回した腕に力を入れて

一博の胸に、紗季の胸の柔らかさや大きさ温かさが伝わる。


紗季に思いっきり女性を感じた。

けれども、一博は固まったまま動けないでいた。

自分の予想の範囲外の行動を紗季にとられて

頭が身体がフリーズしてしまっていた。


紗季は、心の底から一博と唇を重ねられて

嬉しくて堪らなかった・・・。


紗季の心の中に、小さく生まれた淡い恋心に

感謝の想いを込めて、勝手に身体が動いていた・・・。


今迄、いろんな沢山の男とキスをしてきたが

心の底から後悔していた・・・彼と初めてキスしたかった・・・。


何故だかそんな想いが身体の奥から込み上げてきた・・・。

一博とキスをして初めてそんな想いにかられた・・・。


キスをしている時間が物凄く長い時間に思えた・・・。

まるで、時が止まっているかの様に・・・。

一博の下腹部の隆起は、紗季にとって何者にも変えられない

最高の贈り物であった。


昨夜とは違い、今は、本当に心から一博に

女性と意識して欲しくて堪らない思いで一杯になっていた・・・。


今迄、援交で男達と身体を合わせて来た時とは

全く違う感情を、人生で初めてと言って良い感情が

紗季の中で生まれて来たからであった・・・。


義父やコンビニのオーナーとも全く違う男だと

紗季は本能で感じていた・・・。


一博の胸から、両腕を背中に回し・・・

力強く抱きしめた・・・。


腕が回りきらないほどの大きな背中・・・。

頬に伝わる一博の体温や息遣い・・・。


その感触に酔いながら、徐々に腕が上に上がって行く・・・。

一博のアゴに紗季の頭が当たる・・・。


紗季が顔をあげ、見つめる先に

優しい眼差しの一博の顔があった・・・。


次の瞬間、紗季の唇が一博の唇をふさいでいた・・・。

紗季の身体の小ささを感じながらも

その小さな身体でとっても大きな何かを抱え込んでいるのでは?


一博は、紗季を腕の中に抱きしめながら

そんな思索をめぐらせていた。


女性の身体を初めてこんなにしっかりと抱きしめて

特に紗季の身体の小ささに、細さに

力の加減では折れてしまうのでは?と思いながらも

とっても柔らかくて、良い香りが髪の毛や紗季自身から

香ってくるのが、堪らなく、一博の男を刺激する。


胸が熱くなり、腕にやや力が入り

股間が更に、熱く雄雄しく反応して力が入る。


もしかしたら、「紗季ちゃんに、分かってしまうかな?」

なんて心配してしまうほど、素直な反応をみせていた。


紗季は、一博の大きな胸の中で、思いっきり泣いた

涙が自然に溢れてたまらなかった・・・。

こんなに心の底から涙を流したのは、一体何時以来だろう?

記憶にないほど、紗季は心からの涙を流していなかった・・・。


廃人になってた時に、流したと言うよりも

流させられたと言った方が良いのだろうか・・・。


紗季は、突然、涙を流しながらも

幸せな思いに包まれはじめていた・・・。


紗季のおへその辺りに、一博が

紗季の事を女と意識してくれている証拠である

何か熱くて硬い突起物が当たりはじめたからである・・・。