紗季は、一博の大きな胸に抱きかかえられ

大きな物に包まれて、自然に心が開放されて

自分の意思とは関係なく

とめどなく、涙が次から次に流れてくる・・・。


昨夜自ら裸で一博の胸に飛び込んだ時とは

明らかに心の状態が違っていた・・・。


今迄の紗季の価値観で、泊めてもらったお礼に

身体を提供して、食事やお金を得る。


そんな何時もの、自然な振る舞いの中の行動だった・・・。

でも・・・今は・・・全く違っていた・・・。


全身に感じる一博の宇宙の様なとっても広い大きさ

太陽の様な心地よい温かさ、月の様な優しい癒し

紗季にとっては、どれもが始めての感触だった・・・。


心の奥が初めてキュンと締め付けられるのを感じた・・・。

どう対応して良いのか分からない、感情だった・・・。


一博は、紗季の事が愛しくて堪らなくなって

可愛くて、折れそうな紗季の身体を抱きしめていた。


いやらしい気持ちからではなく、純粋に紗季の涙に

反応して、身体が自然に動いてしまったのだった。


自分の意思を飛び越えて、迷う間もなく身体が動いていた・・・。

ただただ、紗季の涙を受け止めてあげたくて。

紗季の記憶に微かに残る父親の大きな肩・・・。

幼い頃に、一度だけおんぶをしてもらった時の記憶が

彼女の心の奥底に、鮮明に残っていた・・・。


もう、おんぶをしてもらえなくなって何年だろう?

別れて何年になるのだろう?


子供にとって、親はどんな親でも親である。

一緒にいようと、離れていようとも・・・。


一博の肩がそんな記憶を呼び覚ます・・・。

紗季にとって、一博の存在がだんだんと

かけがいのない存在へと変化して行く・・・。


大きく厚く温かい肩の温もり・・・。

この時間は、何物にも変えられない

とても貴重な時間になっていた・・・。


一博は、勇気を振り絞り、紗季の涙をよれよれの

ハンカチで拭ってあげた・・・。


そして、紗季を引き寄せて、優しく大きく抱きしめてた。

一博の胸の中で、紗季が震えていた・・・。


心の汗をたくさん流しながら・・・。

紗季の体温が、肌や胸の膨らみの感触が

可愛らしい息遣いや、とっても心地よい紗季の香りが

一博の五感を刺激する。


紗季の手や指の感触は、今迄に経験した事のないものだった。

柔らかくて、温かくて、手の平はちょっと冷たくて・・・

一博の指に、一本一本絡みついてくる。


一博の胸の鼓動は、否が応でも激しくなる。

こんなに若くて、綺麗で可愛い女性に

こんなに近い距離で身体を合わせられ

手まで握られるなんて、夢かと錯覚してしまうほどの

興奮を身体の底からせざるには、いかなかった。


左肩の紗季の頭の重みが、たまらなく心地よかった。

人が沢山行き交うショッピングモールのベンチで

時間が止まっているような、別世界のような気がしてならなかった。


紗季は、一博の指の温かさに、温もり、肩の大きさに

大きなものを感じていた・・・。

もう忘れてしまった、本当の父親の肩の大きさや温もりを・・・。

紗季は、一博の肩に頭をつけて

目を閉じて、今迄の自分の人生を振り返っていた・・・。


何故だか、自然に涙が頬をつたう・・・。

一博は、固まったまま、紗季の体温と息遣いを

ただただ、感じているだけだった・・・。


今迄、紗季が出会ってきた、男とは、明らかに違う一博・・・。

「こんな男の人もいるんだ・・・」

そんな、想いでこの小さな幸せの一時を味わっていた・・・。


さっき食べたお寿司は、本当に今迄食べた

何処の高いお寿司屋で食べたものよりも、物凄く美味しかった・・・。


「なぜ?・・・」

「お店が違うだけ?」

「彼とだから?・・・」


紗季一人の考えでは、どんなに考えても

良い答えは、導き出せなかった・・・。


紗季の右手が一博の左腕をつたい

左手の上に乗せられた・・・。


紗季は、なぜだか解らなかったが

胸の鼓動が激しく高鳴るのを覚えた・・・。

ある日、紗季は初めて会う援交の男性と街を歩いていた。


何時もの様に質屋に入り、身分証明書を出してもらう段階になって

急に、男が顔面蒼白になり、唇や身体が小刻みに震えだし

紗季の首を全身のありったけの力で絞めて来た。


紗季は、初めは今起きている現実の事態を認識出来ずに

固まっていたが、痛みと息苦しさを感じて我に返り

紗季も全身のありったけの力で、逃げようと必死で抵抗したが

中々取れないので、薄れ行く意識の中で

「まだ、死にたくない!」と心の底からの声が聞こえた。


仕方がなく男の股間を思いっきり蹴り上げた

すると男は、首にかかった手を外し

股間を押さえて床で悶絶しはじめた。


その隙に、質屋の店員から品物を返してもらい

男から逃げる為に、必死の形相で店から飛び出した。


男も紗季を「このアマー、待ちやがれー!」

大きな怒鳴り声を吐きながら、ゆっくりながらも追いかけてくる


紗季は、その声を背中に浴びながらも必死で走った・・・。


前から来る、全ての男が自分を追いかけてくる敵に思えて

建物の間にある隙間的な路地に入り込んだ。


しばらく、ジーっと物影に隠れていたが

ふと気付くと、とあるビルの非常階段が目に飛び込んできた。


紗季は、何故だか分からなかったが

その階段を登ってみたくなった。


その階段を足音を立てずに、ゆっくりと登りきると

頬にあたる風が、とっても心地良い

街中が見渡せる、とっても見晴らしも良い

素晴らしい景観が、紗季の目の前に現れた。


「わー・・・きれー・・・」

あまりもの美しさに、思わず口から言葉が漏れていた・・・。


夜の街のネオンが、色とりどりで、綺麗で

お祭りでもやっているかの様な光景だった。


紗季は、さっきの恐怖を、今迄の苦労を

全て忘れて、時間を忘れて、この空間を目一杯楽しんだ・・・。


一博に、出会う、あの日迄・・・。

紗季の顔に、落胆の様子は微塵も無かった・・・。

むしろ、これから自由になれた事の方が嬉しくてならなかった。

それも3千万もの現金を得て・・・。


紗季は、早速ヴィトンのバッグに必要最低限の物を詰め込み

セーラー服を着て里塚のマンションを出た・・・。


まだ、昼過ぎだったため、太陽が暑かった・・・。


この日から、紗季のその日暮らしが始まったのだった。

紗季は、毎日100万円づつ貯金をして行った。


援交や質屋の売り上げは、相変わらずいや

泊まりと言う項目が増えたため、倍増した。


紗季を物にしたい男達は、こぞって殺到した。

その為、紗季は泊まる所に不自由は全くしなかった。


だが、Hが終わった後に、皆が皆、直ぐに身体を離し

自分のやりたい事をはじめるのが

楽な反面、寂しさを覚えた・・・。


「私は割り切っているはずなのに・・・。

なんなの・・・。この気持ちは・・・。」


そんな生活が半年以上続いた・・・。

そんな、虚しさや寂しさをまぎらわすために

紗季は、とっても良い場所を見つけ

時々、一人になる時間を作ってその場所に行くのだった。


その場所が一博と出会った、ビルの屋上であった・・・。

順調に見えた紗季の愛人生活だったが

突然終わりの日がやって来た。


里塚の奥さんが、このマンションから出てきて

買い物に出かける紗季と里塚を目撃したからだった。


「ちょっとあなた!」

「な、なんだよ」

「私はね、いくら浮気をしようと

愛人を作ろうと、黙認してきたわ」

「あ、ありがとう」

「でもね、それは何れ私の元に帰って来ると思って

あなたも、会社の経営でストレスが溜まっているだろうからと

思って、自由にさせてあげてたわ」

「本当に、お前には頭が下がるよ」

「だけど、今回ばかりは許せないわ」

「何処が?」

「どう見たって、中学生か高校生の未成年でしょ」

「ああ、まあ」

「私はね、相手も大人ならお互い

ある意味ビジネスとして受け入れられるわ」

「うん・・・」

「だけど、未成年は、子供には、手を出しちゃダメでしょ

犯罪でしょ、それが情けなくて、堪らないのよ!」

「わ、分かったよ」

「じゃあ、明日、彼女に会いに行って話して来ます

良いですね!」

「ああ、すまないな」


紗季の目の前に、突然現れた

フレームにダイヤを散りばめた眼鏡をし

茶色い髪のショートカットに

ミンクの毛皮のコートを来た

真っ赤な口紅が、しつこい位目立つ

40過ぎ位に見える

里塚の奥さんと名乗る女性が座っていた。


「突然ですけれど、里塚と別れていただけます?」

「は?一体どう言う事ですか?」

「いくら何でも、未成年のあなたとの愛人関係を

何時までも黙認出来ないのよ」

「そうでうか・・・」

「ただとは、言わないわ」

そう言うと、バックから1万円の束を10個乗せた

「これで、いかが?これだけあれば

次に住む家も見つけられるでしょ」


紗季は、突然顔を伏せ、涙ながらに

「実は、私はなりたくてあの人の愛人に

なった訳ではにんです」

「え?どう言う事?」

「あの人に脅迫されて、犯されたんです」

「なんですって?!」

「大人しく・・・俺の愛人にならないと・・・

隠しカメラで撮った・・・映像を流すと・・・」

「そ、そんな卑劣なマネを?!」

「はい・・・それで・・・今迄・・・嫌々こんな生活を・・・」

「そうだったの」

「奥様!ありがとうございます・・・貴女は恩人です!」

里塚の妻は、黙って更に20個の束を置いた

「これは、慰謝料よ、その代わり警察には言わないでちょうだい」

「わ・・・分かりました・・・田舎の方に行って

隠れて暮らします・・・」

「本当に、家の馬鹿がごめんなさいネ」

「いえ・・・もう・・・良いんです・・・」


そう言うと里塚の妻は、部屋を出て行った。

紗季は、涙を拭きながら顔を上げて

テーブルに置かれた3千万を見つめて

にっこりと微笑んだ・・・。

紗季は、お金をほとんど、いや、全く使わないで

ほとんど男に使わせて、稼いだお金は全て貯金していた。

とっても現金な女の子になっていた。


女の感で、今、住んでいる里塚のマンションは

奥さんの知らない、愛人用のマンションだと実感し

何時かは、「私は捨てられる」

そんな思いが心の片隅に芽生え

その時に困らない為の備えとして

お金を大事にして使わなかったのだった。


この頃、コスチュームを着ると

売値が倍以上になる事が分かって

援交の男達に連れて行ってもらって

男達の好みの女子高生の制服を何種類も買ってもらった。


「男って本当に単純ね」

益々紗季の男への印象が下がる一方であった。

この頃の売り上げは、平均的なサラリーマンの月収を

1日で軽く超える程であった。

その上、沢山のプレゼントを質屋で売りさばいていたので

貯金の額は、1000万を直ぐに超えた・・・。


17歳の誕生日には、沢山のお得意様の男から

ブランド物の貴金属をプレゼントもらい

違う男に会う時に、質屋に行って売った。


紗季のお得意様は、100人を超えていた・・・。

紗季は頭が切れるため、メールのやり取りや

実際に待ち合わせでの、容姿・態度で男を厳選した。

質屋に行かない男は、例え10万の約束でも

直ぐに断った。すると、紗季の容姿に目がくらんだ男は

皆、質屋に行って身分証を質屋や紗季に見せるのだった。


とは言っても、所詮は子供

ホテルで豹変する男が多い事を彼女は自分の身を持って

知って、その中から現在のネットワークを形成したのだった。

紗季の心の中には「男なんてただのやりたいだけの

スケベで低級な生き物」

と言う思いが2人の男によって

男全体の印象として、身体に心に刻印された。


紗季がこれまで読んだ沢山の本の中に出てくる男の

イメージは粉々に消え去った・・・。

現実は、こんなものなんだ・・・。

そんな、男への失望感が芽生えていた。


週に2回里塚がやってきて紗季の若い肉体を

好きな様に、自分の欲望が尽きるまで堪能する。


紗季は、初めは、義父のレイプの記憶で苦痛だったが

これも、お金の為、生きて行く為、と思っていたらいつしか

呼吸をする様に、ごく自然にHが出来る様になっていた。


里塚は、本当にお金を持っていた。

肉体関係が始まると、手当てが月50万になり

買い物に行くと、ブランド物の貴金属を

ねだればねだるほど、買い与えてくれた。


紗季は、更に携帯を買ってもらった。

里塚と連絡を取るだけでなく

里塚と会わない日に、出会い系サイトで

自分を少しでも高く買ってくれる成人男性と

いわゆる援助交際を始めた。


ホテルに行く前に、必ず質屋によって

余分なブランド物貴金属を売りさばく為に

紗季は、まだ未成年で売れない為、彼らを使い

かつ、相手の身元をしっかりと確かめる事が出来る為

一石二鳥だった。


翌日は、必ず銀行に行き、数十万単位の貯金をした。

紗季は、食べる物は、一人の時は本当に必要最低限の

物しか、買って食べていなかった。


この頃になると、里塚に会う時は、里塚にご馳走してもらい

援交の時は、その相手にご馳走してもらう為

普段は、逆にあっさりさっぱりした物を好んで食べていた。


「男って本当にスケベで馬鹿で、甘えるのに弱い生き物ね」

紗季の価値観をより確信に変える日々であった。

紗季が、真っ白なバスタオルで黒く長い髪の毛を

吹きながら、初老の紳士の前のソファーに座る。


「そう言えば、自己紹介がまだだったね

私は、里塚裕一と言うコンビニ5店舗を経営する

オーナー社長だよ。

このマンションは5店舗目が入った私が建てた

マンションなんだよ。

特に、この部屋は私だけしか知らない

妻にも内緒の部屋だから、君の気の済む迄

何時までもいてもらっても結構だよ!」

終始得意げな笑顔でまくしたてた。


「さ・・・き・・・で・・・す」

「ごめんね、おじさんちょっと耳が遠くて聞こえなくて

もう一度聞いても良い?」

「中野・・・紗季・・・です・・・」

「うーん、始めて君の声を聞けた!

とっても可愛らしい声だね。

紗季ちゃんか、よろしくね」


正直、一人っきりになりたかったが

行くあてが無かったから里塚の言葉に

甘えようと思った・・・。


と同時に、何時かは分からないが

里塚に身体を許す時が来る様な予感がした。


昔からの母の教育が染み付いていた紗季には

ただただ、無料で泊まらせてくれる訳が無い

何か見返りを求められる・・・。

いずれは、この身体でお礼をするのだと

女の感でそう思っていた・・・。


ただ、今の傷心の紗季には

里塚を受け入れられる程の余地は無かった・・・。


「今は、ごめんなさい」紗季は、里塚にそんな思いでいた。


そんな事は、今の紗季に微塵も求めていない

里塚は、いずれそうなったら安い投資だと

紗季の容姿・スタイル・年齢を見て打算していたのだった。

「とりあえず、毎月の生活費30万円でどうかな?」

「・・・」

ただ、こくりと紗季は、首を縦に振った。



実際に、3ヶ月と待たずに、紗季の方から

里塚に自分の身体を差し出した。