一博は、今の紗季の突然の行為にちょっと驚きながらも

ちょっとは、いや、結構身近に感じられる様になっていた。


久しぶりの女性の唇の感触が、自分の唇にしっかりと残っている。

肌の温もりが胸の感触が、自分の胸の中にしっかりと残っている。


ただでさえ、思わず自分もお金を出して

全てを見たり、触ったり、気持ち良くなりたいと思ってしまう程の

美貌と妖艶さを兼ね備えているのだ。


お金を出してまでもって言う、男達の気持ちも分からなくはなかった。

この、左肩から左腕全体に、今でも感じ伝わってくる

紗季の女性としての、感触、魅力、温もり。


今、一博の左腕に、しっかりと紗季の胸が押し付けられて

大きさや温もりや弾力が、手に取るように伝わってき続けていた。


紗季の女に、一博の中の男が完全に目覚め

もうクラクラしはじめて、ノックアウト寸前になっていた。

紗季の存在が、だんだん特別なものになりはじめていた。


一博は、ゆっくりと紗季の顔に視線を向けた。

おでこを一博の左肩に乗せて、耳を頬を紅く染めた

幸せそうな笑顔が、光り輝きながら一博の目に飛び込んできた。


さっきまで重なっていた、可愛くてちょっと厚めの唇も

ピンク色の口紅が良く似合って、しっかりと女の魅力を放っていた。


彼女の事をもっと良く知りたい!

もっと話したい!

もっと触れたい!


一博の男の心がそう叫びはじめていた。


「紗季ちゃん?」

「・・・なに?・・・」

「これからどうする?」

「私は・・・時間があるから・・・一博さんに・・・お任せします・・・」

「じゃあ、とりあえず、別の場所に行こうか?」

「うん・・・」


一博は、紗季に合わせながら立ち上がり

幸せそうに腕を絡み合わせたまま

ゆっくりと歩いて、駐車場に向かった。


行き交う人々の中に紛れ、広いショッピングモールを行く。

まぶしい光が、二人の行く道を、明るく照らし出す。