いつも、紗季は、援交の時には、実に積極的に振舞っていた・・・。
それは、男が好きな、男が求める女を演じ妖艶になっていた・・・。
少しでも貰える金額が増える様に・・・。
また、声をかけてもらえる様に・・・。
彼女なりに、数をこなし、実体験を重ねてきた経験から
自然に身についてきた事であった・・・。
でも・・・今は・・・「お金を」とか「声を」とかを全く気にせず
ただただ、心がかき乱されるくらい、一博の事を渇望していた・・・。
狂おしいくらいに・・・体の芯がうずき・・・頭がクラクラする・・・。
呼吸が乱れ・・・息苦しくなる・・・口の中が乾きカラカラになる・・・。
「一博さん・・・私・・・」
「どうしたの?」
一博は、紗季を大きく包むような目線と心で抱擁する。
「やっぱり・・・」
「うん?」
紗季は、一博と出会ってまだ半日位しかたっていないのに
こんなに自分が、自分の中が、損得抜きで
ハリケーンに襲われた様に、かき乱されているのが
とっても不自然で・・・、人事のようで・・・、不思議な感じだった・・・。
援交で、あんなにたくさんの男達と、毎日のように出会い
身体を重ねあって来た時には、何にも感じなかったのに・・・。
何故、一博だけが?・・・。
その事が全く理解出来なかった・・・。
今までも、頭で考える事よりも
思った事を直ぐに行動に移す人生を生きてきた・・・。
身体や感覚の方は、物凄く敏感に鍛えられていた・・・。
職業柄と言って良いのか・・・
彼女の生き方からと言った方が良いのか・・・
だからこそなのか、身体と頭がバラバラの状態なのかもしれない・・・。
中野紗季・・・18歳の初恋?・・・
彼女は、そんな身体を想いを押さえて、黙って一博から離れた・・・。
右手だけが一博の左手に重ねられていた・・・。